【我慢大会からの逸脱】
私の我慢大会は、
もう限界にきていた。
抗がん剤、全6クールが完了した。
ひと区切りがついた、そのタイミングだった。
先生に、
どうしてもお礼を伝えたいと思った。
会社の同僚や友人なら、
食事に誘ってご馳走する。
それが、普段の私のやり方だ。
でも、先生を食事に誘うわけにはいかない。
迷惑にならないこと。
困らせないこと。
関係を崩さないこと。
――そう考えた末、
私は、手紙と、名入りのボールペンを渡すことにした。
(ツインレイ界隈の原則に、
一応、則ったつもりだった。)
手紙に書いたのは、
入院中から今までの、感謝の気持ち。
ただ、一行だけ、
どうしても削れなかった言葉がある。
「先生にお会いした時から、
懐かしいような気持ちになることがありました。
初めてお会いしたはずなのに、
以前にも出会っていたような、
心が穏やかになる感覚です。」
それだけ。
これが、
私にできる、
ギリギリの告白だった。
こんな短い数行のことすら、
伝えてはいけないのなら。
――もう、ツインレイなんて、どうでもいい。
そんな心の声に、
私は、初めて従った。
きっと、
その界隈の人が聞いたら、
卒倒するレベルの行為だろう。
先生は、
少し恥ずかしそうに、
「ありがとうございます。恐縮です」
とだけ言って、微笑んだ。
そして、その後からだ。
不思議なことが、
少しずつ、起き始めた。
いわゆる――
「シンクロニシティ」
というやつだ。
