12: 地獄の3丁目へようこそ(占いジプシー)

【なかなか、いい線いってる鑑定師】

黙ってこの想いを温めろ。
今は、芽生えた魂の声を聞け。
手を離せば、戻ってくるご縁。

……そんな言葉を聞きたくて、
私は膨大な時間とお金を費やしているわけじゃない。

誰も、はっきりと未来を教えてくれる鑑定師はいなかった。
数ヶ月のあいだに、すでに20人ほどの鑑定を受けていた。

いくら使ったかなんて、
怖くて計算する気にもならなかった。

それでも、どうしても答えがほしくて、
私は占い師を探し続けていた。

そんな中で出会ったのが、ユタだった。
口コミが良かったこと、
そして料金が比較的良心的だったこと。
それが、依頼した理由だ。

このユタが「なかなか、いい線いってる鑑定師」だった理由は、
まるで、私自身が感じていることを、そのまま言葉にされたような鑑定だったからだ。

「まず、あなたの魂に触れた瞬間、
胸の奥が、じんわりと熱くなりました。

それは悲しみではなく、
長いあいだ報われなかった努力や想いが、
ようやく光に還ろうとしている――
そんな波動の熱です。

あなたは、誰かのために、
強くあろうとし続けてきた方ですね。

痛みを見せず、笑顔で日常を回す。
その姿を、周りは『しっかりしている』と言うでしょう。

けれど本当は、
夜の静けさに包まれた時、
心の底で、こう問いかけてきたのではありませんか。

――私は、本当はどう生きたいのだろう、と」

私は、自分の話を一切していなかった。
それなのに、
「……視えてる?」
そう思わせる言葉が、並んでいた。

また、彼との未来についても、
「ご縁は、続いていきます」と、はっきり断言した。

ただし。

相手も商売だ。
ここで、このまま引き下がることはない。

今度は、
「カルマの靄(もや)がある」と言い出した。

……来たな。

この後には、決まって“儀式”の案内が入る。

本来なら◯◯万円のところ、
リカコ様には、特別に◯◯円で――
という、お決まりの流れだ。

でも、この頃の私は、
その手のオプションを、
きちんと断る術を、もう身につけていた。

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