【入院生活】
全6クール予定の、初めての抗がん剤投与は、ひとまず順調だった。
初回は、副作用の有無や薬剤調整のため、入院での投与となる。
5日間に分けて、少しずつ体に入れていく。
抗がん剤投与を始めた、その夜からだった。
頭が割れるほど痛く、とにかく眠れない。
死ぬほど体調が悪いのに、眠れないのだ。
24時間、点滴の針が刺さったまま。
寝返りも打てない。
真夜中、点滴が空になると、
ピピピピピー……とアラート音が鳴り、
浅い眠りを、容赦なく引き戻す。
重たい頭と体のまま、朝を迎えた。
「リカコさん、おはようございます。
いいですか?」
ベッドを区切るカーテンの向こうから、主治医の声がした。
「はい、どうぞ」
おもむろにカーテンを
シャッ、と勢いよく開けて入ってくる医師も多い中、
先生は、いつも一呼吸おいてから入ってくる人だった。
「昨日は、重篤な副作用も出なかったみたいですね。
ご気分は、どうですか?」
穏やかに、微笑んでいる。
「はい……頭が、割れそうに痛くて」
「じゃあ、鎮痛剤、出しましょうね」
「はい、お願いします」
いくつか問診をやり取りして、
先生は病室を後にする。
私はベッドに横になったまま、その背中を見送った。
先生の横に張りつくように立っていた研修医は、無邪気でポップな兄ちゃんだった。
それと比べると、先生はまるで重厚な家具だ。動かないし、主張もしない。
でも、そこにあるだけで、ちゃんと安心できた。
先生の顔を見ると、安心する。
……なぜだろう。
