【抗がん剤開始 初日】
朝から、抗がん剤開始の準備のために、
看護師や薬剤師が入れ替わり立ち替わり、
ベッド脇に来ては説明をしてくれる。
人生で何度も経験したいものではないけれど、当然、初めてのことだ。
この日は珍しく、少しだけ緊張していた。
病棟の担当医師が、血管を探し、点滴の針を刺す。
私は、静かにぶら下がっている
“劇薬”の入った点滴の袋を、じっと眺めていた。
ぽたっ、ぽたっ……。
落ちた薬は、細いチューブを通って、
少しずつ、確実に、私の体の中へ入っていく。
何かあった時のために、
横には看護師が待機している。
「ご気分はどうですか?
大丈夫ですか?」
ちょこちょこと、様子を聞きに来てくれる。
「はい。何も変わりありません」
「じゃあ、リカコさん。
何かあれば、すぐ呼んでくださいね」
そう言って、ナースコールのボタンを
私の手に握らせ、病室を出ていった。
……ひまだな。
私は、病室の天井を、
ぼーっと眺めていた。
